1.商品の生産開始までの期間を求める
前回、商品循環と景気循環の回復期を比較して以下の予測を立てました。
実際に、鉱山や油田の開発における生産開始までの期間を調べて、上の予測を確認してみます。
2005年にJOGMECが発表した鉛・亜鉛探査の傾向と新規鉱山開発との関係によると、最近15 年以内に操業開始した15 の新規鉱山を無作為に抽出して開発に要した期間を調べたところ、「鉛・亜鉛鉱山の開発に要した標準的期間は、5 年から10 年の間であると推定される。」とのことです。
また、原油開発においては、鉱区取得~探査~試掘~商業生産まで、総開発費は、数百億円から数千億円、期間は、5年から10年かかると言われています。
JXホールディングス 石油・天然ガス開発の流れ
佐藤秀の徒然幻視録
【原油開発の試算例】
探査費用・・・3億円
試掘油井・・・10億円
成功確率・・・3%
(3+10)÷0.03=433億円・・・開発費用
JXホールディングス 石油・天然ガス開発の流れ
佐藤秀の徒然幻視録
【原油開発の試算例】
探査費用・・・3億円
試掘油井・・・10億円
成功確率・・・3%
(3+10)÷0.03=433億円・・・開発費用
これらの結果から、鉱山や油田などの商品の生産開始までの期間は、平均で約7.5年と考えられ、前回の予測がほぼ正しいことが分かりました。
2.工業製品の生産開始までの期間との比較から相対比率を求める
一般的に、製造業が工場を新設して、工業製品の生産を開始する平均期間は、6四半期(=1.5年)と考えられます。
従って、以下のような式が成立します。
商品の生産開始までの期間 = 工業製品の生産開始までの期間 × 相対比率
相対比率 = 5.0 (=7.5年/1.5年)
3.商品循環と景気循環の周期の関係を定義する
全体の在庫循環を供給面から定義すると、以下のように、企業の生産開始あるいはリストラのプロセスから構成されます。
回復期・・・リーダー企業が生産を開始。先行メリットがあるために、需要>供給という状態が続く。
好況期・・・競合企業が生産を開始。競争が激しくなり、需要=供給でバランスする。
後退期・・・後発企業が生産開始。需要<供給となり、在庫が急増する。
不況期・・・過剰在庫を解消するために、生産設備や人員のリストラが行われる。
リストラ時の撤退コストは、生産開始時の参入コストに比例すると考えられるので、相対比率も同じ値だと考えられます。
従って、以下のような式が成立します。
商品循環の1循環 = 景気循環の1循環 × 相対比率
(相対比率 = 5.0)
4.景気循環の1循環の長さを調べる
景気の底から次の景気の底・・・73ヶ月(6.08年)
景気の山から次の景気の山・・・66ヶ月(5.50年)
景気の山から次の景気の山・・・66ヶ月(5.50年)
両者の平均を取ると、5.79年となります。
5.商品循環の1循環の長さを求める
商品循環の1循環を計算すると、以下の通りです。
景気循環の1循環(5.79年) × 相対比率(5.0) = 28.95年
6.考察
これまで、経験的に商品循環の1サイクルが、約30年弱である事が知られており、上の計算結果と合致することから、計算式の考え方が正しいことが分かります。
すなわち、商品循環は、景気循環の約5倍の参入コストとなる為、周期も5倍となっていると考えられます。
次回は、需要面から商品循環と景気循環を比較分析して、商品循環の特徴と、1周期で要員が枯渇する原因を調べたいと思います。