2007年以降のサウジアラビアの油田開発プロジェクトと原油価格予測

【2007年】
今年の6月とも言われていたKhursaniyah(AFK)油田の生産開始が2008年にずれ込む見込みとなってきました。その結果、2007年中は、AFKからの日量50万バレルの追加生産量が無くなり、さらに、既存油田の減退(年率5~7%)を考え合わせると、2007年末のサウジの生産量は、日量800万バレル以下の水準まで減少する可能性があります。冬場の需要期に向けて、OPECの増産は困難です。
一方、2007年の原油需要は年率で1.8%増と堅実に伸びており、米国経済の減速を、中国、インド、欧州向け需要がカバーすることが、確実視されています。現段階で原油在庫が少ないことから、冬場の需要期において、需給がタイトになり、原油価格は、1バレル75-80ドルの水準まで高騰することが予想されます。ここ数年の原油価格高騰の原因が、米国のハリケーン襲来や製油能力不足などの間接的要因によるものだったのに対して、今回は、原油需給の逼迫という直接的要因によるもので、本格的な石油危機時代の幕開けだと言えます。

【2008年】
2008年初頭に、Khursaniyah(AFK)油田が稼動すると、サウジの生産量は日量830~850万バレル程度まで回復します。生産量の回復に伴い、原油価格の高騰は一服して、1バレル70-75ドルの水準で安定すると考えられます。
2008年の原油需要は、好調な世界経済を背景に拡大し、IEAの予測では前年比で2.5%の伸びが予測されています。
一方、供給量の大幅な拡大は難しく、2008年12月に予定されていたShaybah油田第一次拡張とNuayyim油田の稼動も、AFKなどの遅延の影響で、2009年にずれ込むものと思われます。
2008年末の暖房油需要期に入ると、再び需給がタイトになり、価格が1バレル85-90ドル水準まで高騰すると考えています。
2008年末頃からは、恒常的に、世界的な原油需要の伸びにサウジの供給力の拡大が追いつかない状態が続き、原油価格が最高値を徐々に切り上げていくものと思われます。

【2009年】
2009年に、Shaybah油田第一次拡張とNuayyim油田の稼動が完了すると、サウジの生産量は、日量850~870万バレル程度まで回復します。しかし、拡大する需要(900万バレル)をカバーすることはできないので、1バレル90-95ドル水準まで高騰すると考えています。
サウジアラムコが2009年12月に稼動予定としているKhurais油田についても、全体的なスケジュールの遅延から2010年にずれ込むことが確実です。

【2010年】
2010年に、Khurais油田とShaybah油田第二次拡張の稼動が完了すると、サウジの生産量は、日量900万バレル程度まで回復すると考えられます。しかし、この程度の供給量の拡大では、サウジに対する全ての需要(1000万バレル)との差が拡大するために、さらに原油価格に上昇圧力がかかり、1バレル100ドルを窺う水準まで高騰すると考えています。
その後のサウジの油田開発プロジェクト(Neutral zone, Muninfa 等)は、市場価値の低い重質油の油田が中心となるので、稼動によって産出量が増えても、原油価格の上昇を抑制する効果は低くなります。
このように、サウジの実質的なオイルピークは2010年となり、2011年以降の原油価格は1バレル100ドルを起点に直線的に上昇すると予測しています。

【サウジ原油生産量と価格の予想】
2007年末:800万バレル 75-80ドル/バレル
2008年末:840万バレル 85-90ドル/バレル
2009年末:870万バレル 90-95ドル/バレル
2010年末:900万バレル 95-100ドル/バレル